カンボジアのまさと(masato_ogiwara)です。
今日は僕がヘッドコーチとして携わっているカンボジアのソフトテニスナショナルチームの紹介をしたいと思います。
関わりだした頃にはチームの人数は10人前後しかおらず、来る人と来ない人がいて、誰が正式なナショナルチームメンバーかわからない状態でした。
しかし、今ではカンボジアソフトテニス連盟もしっかりと立ち上がったため、 チームとしてもようやく格好がついてきました。
チームの人数も一気に増え、ナショナルチームの代表争いも昨年に比べると厳しくなりました。
この一年間言語の壁や文化の違いで選手と衝突してしまった事もありましたが、チームメイトとの信頼関係も強いものになりました。
今回はそんなカンボジアチームが一年でどう成長したのかを紹介します。
ウォーミングアップをするようになった
僕がナショナルチームに関わりだした時には、誰一人としてウォーミングアップをすることはありませんでした。
12年間競技者としてやってきた僕にとっては信じられませんでしたが、彼らはストレッチもランニングさえも全くしませんでした。
僕が一番最初にテニスコートへ顔を出した時は、私服のままウォーミングアップもさせてもらえず、いきなり試合をさせられました。
今思えば、当時の彼らにはウォーミングアップの概念がないので、仕方のないことでした。
そんな彼らも今ではトレーニングやウォーミングアップを自主的に行うようになりました。
ウォーミングアップを指導し始めた最初の頃は、ストレッチの必要性を教えても、なかなか継続せず、どう説明すれば理解してくれるのわかりませんでしたが、一年経ってようやく根付いてきました。
(ウォーミングアップを兼ねたトレーニングの様子)
前衛という概念を理解した
日本でソフトテニスをしている人にとって、前衛と後衛という概念はあって当たり前ですが、ソフトテニスのなかったカンボジアにとって、前衛と後衛という概念はありません。
僕からしたら、当たり前で考えたこともなかった問題だったので、どのように教えてあげればいいのかわかりませんでした。
実際にカンボジアの選手たちはダブルスで、どちらも後衛と前衛をやるし、 展開によってはダブル後衛にもダブル前衛にもなります。
彼らのプレースタイルは硬式テニスからの戦術をそれぞれがアレンジしたものなので、日本のように雁行陣や平行陣という感覚は持ち合わせていません。
試合の中でそれぞれが適応してゲームを進めていきます。
しかし、僕はずっと前衛しかしてこなかったので、僕が教えられることは主に前衛の技術的な部分と戦術だけです。
当時の彼らにとって、僕が試合をしながら教えていた前衛としてのポジションを見たことがなかったので、理解することは難しい(できなくても試合になるから必要性を感じていない)ようでしたが、世界選手権で日本と韓国の試合で雁行陣の試合を見たときに、前衛としての技術の必要性を感じたようでした。
外の世界を知らなかった井の中の蛙は、世界選手権で大海を知り、多くのことに気付き学んでくれました。
それまで、ボレーやスマッシュはソフトテニスにおいてそれほど必要な技術と思っていなかった彼らも、世界選手権が終わった後からボレーとスマッシュの技術を磨くようになりました。
カットサーブを知り、それぞれが打てるようになった
冒頭でも紹介しましたが、僕が初めてカンボジアのソフトテニスチームを訪問した時には私服で行っていたこともあり、肩の可動域がめちゃくちゃ狭い状態でした。
当然そんな状態で、サーブを上から打つことができなかったので、カットサーブを打ったところ、その会場がどよめき全員が拍手をしてくれました。
僕のカットサーブは人に誇れる部分はなく、高校の全国大会決勝の時に隣のコートに飛ばしてしまった経験もあるくらいなので、何に対して拍手をしてくれているのか分かりませんでした。
当時は誰もカットサーブという技術を知らなかったため、僕が打ったカットサーブにカンボジアの選手たちは魔球かと言わんばかりに目を輝かせたのでした。
そのカットサーブを見た選手が、コートに入り返球をしようとするも、回転を読むことができなかった彼らは誰一人として返球することができず、僕の切れ味の悪いカットサーブに翻弄されていました。
このカットサーブの一球が僕をカンボジアのヘッドコーチに導いてくれたと言っても過言ではありません。
そんな僕の魔球を返せなくて、悔しい顔をしていた彼らも、今では全員がカットサーブを打てるようになり、その返球もとても上手になりました。
日に日にカットサーブが上達する彼らは、僕のカットサーブの返球に手こずることも無くなり、コーチとして嬉しい気持ち反面、元プレイヤーとして寂しい気持ちの半分半分でした。
僕がカンボジアのヘッドコーチとして大切にしていること
僕はカンボジアのナショナルチームのヘッドコーチとして携わらせていただいている中で、大切にしていることがあります。
それは自分が今まで経験してきたことを押し付けることだけはしないようにすることです。
僕はソフトテニスを12年間プレーヤーとしてやってきました。
そのため、戦術や技術的なことはカンボジア人の選手よりも知っているはずです。
しかし、彼らのソフトテニスの感性というのは、僕の想像を遥かに超えるプレーを生み出します。
そんな新しいソフトテニスの価値観を日本流に変えてしまうのは非常にもったいないと思います。
彼らがゼロから自分たちで作り上げているこのソフトテニスは僕自身が学ぶことがたくさんあるので、彼らの感性を生かし、伸ばしていくことが僕に求められていることなのではないかと思っています。
ソフトテニスの歴史はずっと主に日本、韓国、台北、中国で作られてきましたが、近い将来にはカンボジアチームも世界4強を狙える位置に行けるのではないかと思っています。
これからのソフトテニスの新しい歴史を作るためにも、ソフトテニスの世界普及のためにも、頑張っていきたいと思います。